判決の疑問点【前編】

反証

判決が出ましたが、こちらも突っ込みどころ満載の様な気がしてきました。
控訴まで諦めたくありませんので、控訴期限の22日まで何とか書き綴ってゆこうと思います。

一日が経ち、ニュースサイトや傍聴した人の話から輪郭が見えてきました。

自白すれば証拠など紙屑同然になると聞いていましたが、正にその通りの結果になりましたし、ちゃんと弁護して貰わないと大変な事になる。
これもまた地で行くような事になってしまいました。

「主犯格の指示に従い、従属的な立場だったことを踏まえても、責任は重い」
ちょっと輪郭を自白しただけで、此処までの事を云われるって何だかねぇ。
「聞いていた」「知っていた」「報酬を要求した」
これだけなんですよね、新たに自白した内容って。
詐欺の要件には充分すぎるのかも知れませんが、もし内容を求められたら、前もって被告人質問しておかないと、これだけでは具体的な事を何も返す言葉が出てきません。
何をどう踏まえるのか?やっぱりこの人も5W1Hが無いんですよね。
判っているのは詐欺のほうでは無く、彼女が初めから認めていた申請の事ばかり。

そりゃぁ裁判官の肩を少しだけ持つとしたら、自白って云っても検察も具体的な事は「証拠書類を見よ」ってな感じで、殆ど被告人質問をしていません。
※塚本が初公判と論告求刑の2回に渡ってしていた事を考えると対照的です。
だからと云って、証拠書類にそこまで具体的な事が書かれていたのか?と考えてみれば、私も見たわけではありませんが、今までの推察を総合的に判断すると、5W1Hが無いものばかりだと思うのです。
そうなると、彼女が認めていた部分しか具体的な事が判らない。

結果「疑わしきは被告人の利益に」ではなく、「自白したのだから良く判らんけど有罪ね」と云う事になったんでしょうね。

ところで判決文によると、中峯君は主犯格だったのですね。
その「主犯格」が懲役3年執行猶予5年、「申請役の補助」である彼女が懲役2年執行猶予4年ですから、これをどの様に解釈すれば良いのか?
私などには到底理解の及ぶ事ではありませんでした。

判決の量刑が不満なのでは無く、一番知りたかった「60万円の受領がどの様なものだったのか?」に一切触れられなかった点に大きな不信感を抱いています。

報道から読み取ると、60万円の事が一切触れられていません。
裁判官は何も触れなかったのでしょうか?
もし触れていないのであるとすれば、予想通り整合性が取れなかったという証左(※)になりますし、それにも触れずただ単に「悪質性が~」なんて云うと、人々の印象は彼女の事を「お金を貰って悪いことした人」で固まってしまい、ミスリードを生む結果になってしまいますよね。
※前にも書いた通り、カタログの様に触れない事は無い事と同じだと考えています。

傍聴した人の話によれば、やはり報酬の話は判決文に出ていないと云う事です。
そこはキッチリと判断してほしかったのですが、警察が出した証拠では検察も相当厳しかったのでしょう。

※60万円を貯蓄したとする彼女と貯蓄の証拠が見つからない検察との不一致を解決出来ていないと云う証。

証拠に整合性が無いと云う事は、疑わしきは被告人の利益にと云う観点からも「金銭の授受が無かった」と云う事になります。
いくら「悪質性」を訴えても、人の気持ちも含めてその性質は弱まる為「友達の頼みで無償でやってしまった」と云う様な感じに受け取る事も出来、量刑にも変化が出てくると思います。

だから検察は云いがかりでも何でも良いから、金銭の授受があった事にしなければならなかったのでしょう。

証拠も余り無い様なのに、何故詐欺罪の必須要件でもない事に執着するのか?と疑問に思っていたのですが、特に報道されて目立っていただけに「お金も貰わず友達に唆された可哀そうな女の子」と云うイメージ出来て、世論が同情に傾くのがマズイと云うのが本音なのでしょう。

しかし、彼女は初公判でこう云いました。
「チョチク、シマシタ」と。
おかしなもので、自白を求めながら、その60万円の受領について問いただす弁護士。
「老後の心配の為お金が欲しかった」と云う理由であれば、貯蓄か証券などの資産形成しか選択の余地はありません。
つまり「使ってしまう」と云う選択肢はあり得ないのです。
※その様な物証は逮捕時に必ず押収されているものですから、「貯蓄」であれば必ず証拠書類として提出されています。

一応、タンス預金やスマホの通帳も考えてみたのですが、利息の付かないタンス預金は投資に興味のある人からすると論外でしょうし、いずれの場合も証拠書類は必要でしょうから、預金と云ったワードが必ず入って来ると思うのです。
でもやっぱり裁判官がそこに触れなかったのが一番不自然ですよね。

今回の公判では彼女の自白の為、証拠書類は殆どがタイトルのみの読み上げで、中身が我々に判らない状態でしたが、60万円の受領に関しては、彼女が「貯蓄」云った為、唯一と云っていい程の実質的な証拠開示になるように感じていました。

他の証拠書類は自白によりブラックボックス化されているため、我々は情況からしか判断する事が出来ませんから、彼女がLINEで思い出したと云っても、それが明らかに信ぴょう性が薄くても、LINEの中身を見る事が出来ない以上、極端に悪い云い方をすれば、会話の内容がデートの約束だったとしても、「あれは詐欺の打ち合わせだった」と検察官や裁判官の思うがままの結論に持って行ける訳です。

その辺りの重要な事について、初公判の被告人質問でも検察側は何にも質問されていない事に違和感を感じ、今までも書き続けてきた訳ですが。

ですから私にとっては、非常に個人的ではありますが、この判決で一番注目していたのは、無罪や有罪でも無く、詐欺の詳細な内容でもありません。
60万円の報酬があったのか?無かったのか?何が嘘で何が本当だったのか?と云う事です。

●彼女は初公判で60万円を「貯蓄」したと云いました。
●一方検察は貯蓄の証拠となる「通帳類」の提出をしていません。
●その他証拠書類のタイトルだけでは、何を持って60万円の報酬を受けたのか?判りませんでした。

※これについては、「報酬」「つみたてNISAと60万円」「何故リスクの高い申請を佐藤凜果さんにさせたのか?」などで推察しています。
報酬に関する証拠として傍聴した人から聞いて判っているのは、中峯の証言と云うタイトルのみ。
この3点がちゃんと嚙み合う事が出来るのか?否か?

普通に考えると、どれか一つに嘘があると云う事になります。

お金を要求して詐欺を働くことと、
無報酬で友人に頼みにより詐欺を働くこと。
この違いは、裁判でもかなり重要な事柄であると、私は考えています。
しかも起訴状にまで書かれている事です。

それが明らかにされない事など絶対に無いと思っていましたから、
この判決にかなり注目していました。

つまりこの60万円の受領に関しては、自白した「貯蓄」と云う言葉と、結びつきが一番強いけど証拠書類が無い「通帳」、検察側が本来であれば60万円の受領を裏付ける書面として提出した「証拠書類」が詳らかになり、その整合性を「ブラックボックス化されずに真実が問える」良い機会だったと思うのです。
それが齟齬無く明らかにならない限り、上記に記したように「金銭の授受が無かった」と云う扱いになるはずなんですね。

この判決を前にして、自白した時点で有罪は確定していましたから、私にとっての注目は、彼女が60万円を受け取っているかどうかだけだったのです。
受け取ったか受け取っていないかで、同じ詐欺であっても、人々の印象は大きく変わりますから。

しかし、何故か判決文には一切書かれる事無く、スルーされてしまいました。
これは証拠主義と呼ばれる日本の裁判を考えると由々しき事だと感じています。

仮に証拠書類が貯蓄に関するものであれば、起訴状に書かれている以上、必ず報酬について述べると思いますし、それが明らかな物証である通帳類で無い事も何故なのかを明らかにするでしょう。
想像すると、受領したとする為に提出されていた証拠書類は貯蓄では無かったと云う事が一番の理由として考えられます。

そう考えると、この判決にあたっては、金銭の授受に一切触れず、自白された詐欺の部分でのみ有罪が下されたと云う事になります。
しかし起訴状の中には金銭の授受は書かれているはずですし、国庫への返金も判決文に出ています。
ならば、報酬を受け取ったという意味において、絶対に欠かす事の出来ない貯蓄と云う自白については「自白の補強法則」が必要なのでは無いでしょうか?
そこはどの様な風に解釈すれば良いのか?これも判らないところです。

個人的な感想ですが、検察側は無罪も止む無しと云う気持ちが幾分かあったとも思えます。
意地でも金銭の授受に拘ったのは、彼女個人の判決ではなく、持続化給付金詐欺に対する風当たりがこのまま続くよう、敢えて逆風の様なものを吹かせたく無い為だと考えられるのです。

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