初公判の状況を聞いた時、不思議な感覚に囚われたのは、敵対するはずの検察が一番彼女に寄り添い、弁護士や親などが予想外に冷たく感じた事でした。
当時は質疑をする男性と女性と云う性の違いかな?とも思ったのですが・・・
今考えれば、あぁそういう事だったのか。
とも思えますが、親御さんの対応は何故あのようになってしまったのでしょうか?
【前にも書きました。繰り返しで申し訳ありません。】
推察できるのは、初公判まで接見が叶わなかったのではないかと云う事です。
流石に全ての公判に出席されていましたので、全く愛情が無かったとは思えません。
娘から何か一言でも聞きたいと云う気持ちは必ずあるはずです。
普通であれば、一日も早く逢いたい、声を聞きたいとの想いから、逮捕から再逮捕の間に接見を申し込む事になると思います。
しかし、あの弁護士です。
「接見禁止です。」の一言で片づけたのでしょう。
接見が叶わなかったと云う事は容易に想像できます。
私みたいな「ねちっこい親」であれば、調べまくって更にしつこく接見を試みる筈ですが・・・
ただこの手の事に疎い親御さんであれば、弁護士の「先生」に難しいと云われれば引き下がってしまう可能性もあったのかと思います。
引き下がってしまえば、後はパイプ役の弁護士さんの情報しか得る事は出来ません。
再逮捕後は公判日程など最低限の作業しかしていないと思われるため、親御さんは「娘がやったのか?やっていないのか?」すら全く判らずに初公判を迎えたのではないでしょうか。
それは初公判での彼女の涙からも想像出来そうです。
そして、初公判当日かもしくはそれに近い日、弁護士さんから連絡があったのでしょう。
(ようやく私の切望する自白が得られたので)情状証人をお願いしますと。
これでは、私が親でも上手い具合に喋る事は不可能かと思われます。
何せ、事の経過を全く判らずに傍聴し、そこでいきなり質問に答えなければならないのですから。
◆
さて、あぁそうだったのかと思えた検察官側の推測です。
先にも記した通り、一度目の逮捕容疑では「起訴猶予」でした。
前項でも記した通り、猶予する「何か」があった事だけは確かな様です。
あくまでも推測の域を出ませんが、
不起訴であれば、単純に公判に耐えられないと云う事になるのでしょう。
猶予と云う事は、起訴したいが公判に耐えられるだけの証拠が(まだ)無いと云う事でしょう。
公判に耐えられるだけの証拠があっても、事情を汲んで不起訴と云う選択は耳にしたことがあります。
逆に猶予と云うのは不起訴を選択できない何かがあるものの、公判に耐えられるだけの証拠が不充分であると置き換える事も出来そうです。
不起訴に出来ない事情や、不充分な証拠。
これらは全て彼女自身にまつわる事でなく、外的要因と云えるでしょう。
検察の方も一人の人間です。
この辺りが何か彼女に対する温かみを感じた一因なのかも知れないと考えた訳です。
そして起訴され、初公判を迎える事となります。
その初公判時に於いて、検察側は敵対すると云うよりも「何か寄り添う」様な質問が印象的でした。
(あくまでも敵対するべき相手としての立場から見た時、相対的にそう感じたと云う意味です。)
◆
自白した事により、提出された証拠書類の中身は結局明らかになる事はありませんでした。
しかし、初公判で彼女が語った内容から想像するとこの様な感じなのかな?
と、情況を推察する事が出来そうです。
4名の供述調書が提出されていますが、結局彼女は中峯君以外の人物には一切触れませんでした。
(そこには中峯君はおろか、同時に逮捕された塚本の調書も無かったらしい・・・何で彼と同時に逮捕なの?と云う疑念はここからも)
濱口や海老原らからの、いわば証拠書類として、第三者の「供述調書」ですから、普通に考えれば詐欺を働いたと云う決定的な事が書かれているハズです。
しかし彼女は自白の際、そこに触れる事は一切ありませんでした。
自白出来るようなものが大して書かれていなかったのか?
もしくは、余り知らない人達なので、公判で質問されると辻褄を合わせる事が出来ず、答えに窮するから自白する際の言葉として採用できなかったか?
の、いずれかと想定されます。
※この供述調書、それぞれ誰のものか判りませんが、訂正書類や陳述書もあることから、再逮捕後に追加資料として付け加えたものでは無いかと予想します。
そう考えると「無理くり感」が拭えませんので、決定的な事は書かれてはいなかったのだろうと思います。
また、冒頭陳述でもこれらの点が出ていないとの事でしたので、「詐欺」を決定づける確固たる証拠書類では無かったと思われます。
そして本人の口から発せられた自白の理由は「LINEを見て思い出した」との事でした。
ただLINEの内容こそ再逮捕前には既に検察に送られていると思うので「猶予」対象の証拠書類(公判を維持する為の補強書類かと)と考えて良いかと思います。
ですからこのLINEの内容は詐欺と云うものを示す決定打では無い様な気がしてなりません。
辛うじて自分自身と関係があり、自白し易いだけのもの。
自白に値する決定的な供述調書では無かったと云う証左でしょう。
初公判では、冒頭陳述において、中峯君とのやり取りも多少描かれている様です。
そう考えると、彼女的には「LINEの会話」はきっかけで、二人で逢った時に「詐欺を知った」と云うシナリオ作りをしたかったのかな?と思いました。
これであれば「LINEを見て思い出す」LINEの内容が大したことが無くとも話は繋がります。
結局この自白は、独自性に著しく欠けている事を考えると、精神的拷問による「早く自由になりたい」と云う極限状態の意識から・・・
「詐欺と云う事実や内容を未だ良く判らない」ために・・・
提供された証拠書類からしかトレース出来なかったものであったと云う事になりそうです。
俯瞰的に見れば彼女の「正当な経営者」発言など、何となくおかしなことを云うなぁ。
などと思いますが、彼女自体、長い拘留で少し頭がおかしくなっていた点があるかと思います。
彼女は彼女なりに「自白」と決めた以上は、罪をかぶる為に涙ぐましい努力を重ねたのだと思います。
ただ提出された証拠書類も大した事が書かれているとも思えないため、この詐欺の詳細を知る事も出来なかったのでしょう。
(この詐欺の詳細を知らぬが故)情報や知識が追いついていなかった為に、外部から見るとおかしな発言に思えたのかも知れません。
また、詐欺とは関係のない部分については・・・
「関係を絶ってもいいと思いますが、何かの縁で知り合ったので、あえて絶縁するまでは考えていません。」
と云う本音も垣間見えます。
>これなどは(反省などと云うベクトルではなく)詐欺を自白した詐欺師から、自然に出てくる言葉では無いと思います。(※1)
これは彼女自身に問題があるのではなく、拘留と云う非人間的な環境に加え、まだ大学出たての社会人一年生が誰のフォローも無く、たった一人で司法のプロと対峙する事に無理があったのでしょう。
あの様な環境に置かれたら、誰もがおかしなことを云い出しそうです。
それをフォローアップするのが本来は弁護士なのですが・・・
◆
さて肝心の「お金」の件です。
証拠書類や自白でも語られていた金銭の授受です。
「詐欺」を認定する為の重要な判断材料の一つだと思いますが・・・
(金銭の授受に関する供述調書もないのに「中峯君の証言」と云うカタチであっても、兎に角証拠書類として入れ込みたかったものが「金銭の授受」であると理解しています。)
判決文で金銭の授受が入っていなかったと云う事は、その部分の判断を回避したと云う事になります。
【検察側は…】
中峯君の証言から「60万円ぐらい渡した。」と云う事が証拠書類として提出されていました。
ただし、「いつ」「どこで」「どの様にして」と云う部分は不明のままです。
【被告側は…】
彼女も自白と云う形で・・・
全く同じように「60万円ぐらい貰った」と云っていますが、
こちらも「いつ」「どこで」「どの様にして」と云う部分は不明のままです。
更に被告側が発言した(違いが出てきた)のは以下の2点となります。
「私から要求した。」
「貯蓄した。」
私が要求したと云う割には、その額も覚えておらず、5W1Hが殆ど語られていません。
また貯蓄ですが、その場合は確実に記帳されますから、証拠書類に出ていない場合は、警察および検察の職務怠慢か、被告の嘘かのどちらかしか選択の余地はありません。
【警察および検察の職務怠慢の場合】
逮捕時に通帳類は100%押収されていると思います。
彼女の自白が本当であれば、何故か通帳などの重要な証拠書類が提出されていないと云う大失態となります。
【被告が嘘を云っている場合】
それはもう、「貯蓄した」と云う部分だけでなく、自白そのものが「嘘」と云う事になります。
わざわざこの「貯蓄」だけ嘘をつく合理的な理由など無いからです。
上記二者の対応を見ると、明らかに後者の理屈が正しい様な気がします。
証拠書類の提出忘れなどあり得ませんし、そもそも冒頭陳述や被告人の答弁からは具体的な5W1Hは全くありませんでした。
※(申請しただけでは当然詐欺にはあたりませんので)申請したという当初から判っていた事実関係の5W1Hは当然あります。
裁判としては、わざわざ嘘の自白までしてくれ、検察は当然ですが、何故か弁護士も含めて皆有罪を求めている訳です。
貯蓄の矛盾点を考慮すると「疑わしきは被告人の利益に」となります。
しかし皆さんが揃って有罪を求めているのに、無罪にする事は(贖罪寄付も終わっている関係上)非常にマズイ訳です。
一つだけ逃げ道がありました。
詐欺罪に金銭の授受の事実は一切必要ありません。
皆が有罪を求めている以上、金銭的な事実には触れなければ良いのです。
そこで出された結論(判決)は・・・金銭の授受は「見なかった」事にする。
「あった」とも「なかった」云いません。
これぞお役人の真骨頂!素晴らしい裁判所の判断ですね。
書類や自白そのものが「無かった・見えなかった」事にして、判決文には入れこまない。
そうすれば、弁護士のポカ(※2)により勝手に炙り出された争点である「お金についての齟齬」そのものが無くなります。
確かに金銭の授受は「詐欺罪」について、法律的には関係ありません。
お金を貰ったと思い込んでいる人が居ればそれでもいいじゃん。
ソイツがお金を奪い取られた訳じゃないしさ。
そもそも詐欺罪とカンケーねぇし・・・贖罪寄付もしてしまったんだから、今更話がややこしくなるだろ。
俺はそこは触らないよ。厄介事は御免だからね。
と、云う心の声が判決文から聞こえてくる様です。
これを書いていて、下世話な話ですがAVのモザイク処理を思い出してしまいました。
モザイクがかけられている意味ってご存じですか?
あれって猥褻だから隠すと云う意味よりも、法的には「何もしていないですよ」と云う建前作りの為なんですね。
現実には「そんな事無いだろ!」と、ツッコミたくもなりますが「見えないのだから、何の行為もしてないですね。じゃあスルーしましょう。」と云うお役人的考えの元、生まれたものなのです。
◆
ただ、事の本質を考えると、金銭の授受は、この「詐欺」と一体の様な気がします。
先にも書きましたが、お金も貰わずに何故犯罪と知りながら手を出さねばならないのだろうか?
非常に不自然です。
検察側が「首謀者に脅されていた」と云う様な冒頭陳述などがあれば、金銭の授受が無かった事に対して一定の理解は可能です。
>その様な事は一言もありませんが・・・
その場合でも「実刑に値するほど」の行為では無く、逆に情状の余地ありと云う風になると思います。
証拠主義ですから「証拠」と「自白」の整合性の観点からも「あった」とは云えません。
しかし「なかった」では、自白そのものの信ぴょう性を問われる事になってしまうでしょう。
裁判とはもっと高尚なものだと思っていましたが、それが崩れてゆく事に悲しさを感じてしまいます。
◆
何故、補助的な役割であった中峯君の「更に補助的な役割」しかしていない彼女が、実刑も視野に入ると云われる程の判決にされたのか?
ヒューマンウォッチングしている方は簡単に判るかと思いますが・・・
「お金の件を逸らすために、敢えて厳しい判決内容にした。」
というのが非常に判り易いかと思います。
傍聴した人に聞くと「あっ、そう云えば(お金の事は)話していなかったな。判決の厳しさに気取られた。」と云う事も聞きましたので。
この「貯蓄した」と云うたった一言により、彼女の自白は「嘘」であったと結論付けて良いかと思います。
そしてこのサイトの所期の目的は達成された事になります。
ただ、ここまで調べてゆくうちに、新たな疑問点が出てきました。
※1:ここで百戦錬磨の裁判官であれば「あれ?」と云う気づきなどがあるかと思いますが、流れ作業の様に、加点・減点で判決出すだけと考えている様な人だと「反省の色が無い」と一蹴するだけなのでしょうね。
※2:この点だけは弁護士に感謝せねばなりませんね。デキる弁護士なら一旦「自白」と決まれば(そもそも自白を勧めませんが・・・)厄介事が起きない様に例えルーティーンの質問でも敢えて回避する筈ですから。
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