つみたてNISAと60万円

反証

被告人質問の時「今後はコツコツと貯めてゆきます」と発言しました。
すると検察官は彼女に云いました。
「それでは不正なことをしないとう宣言になっていない」と。
そこで彼女は「つみたてNISAを活用してコツコツ貯めていきたい」と答えたとされています。

そんな細かいところは突っ込むのに、LINEの内容は放置って、何か不自然じゃないでしょうか?
勿論、LINEの内容は証拠書類に書かれていると云われればそれまでですが、60万円の受領についての5W1Hは証拠書類にも書かれていない様なのです。
こちらはどう説明するのでしょうか?

それを考えると、証拠書類と云いながらも確証を得た様な証拠では無いものばかりなのではないだろうか?と云う疑念を持たれても仕方ないのでしょうか?

通帳と云う証拠もないままに60万円の受領を認めさせる為には、口頭でも何でも良いからお金の数字が必要だったと思います。

しかし公判では中峯の供述が無い状態ですから、数字すら出てくる事は無いでしょう。
いや、中峯が供述の中で別の数字を出したとしても、詐欺罪を認めさせる事が最優先でしょうから、その他の内容の供述が検察側にとって不都合であれば、その書類を証拠としては使いたくないと思います。

通帳類などの物証が提出されていないと聞いた時、疑問に感じた私は「60万円は何かの数字の合算ではないだろうか?」と常々考えてきました。

何故ならば、60万円「ぐらい」を渡したと云うこと以外何も判らないと云います。
しかも、中峯だけでなく彼女も同じ自白なのですから、不自然と云うほかはないでしょう。
60万円と云う高額なお金ですから、どの様な状況であっても、一括なのか分割で渡したのか?何時頃、何処で、ぐらいはハッキリとは覚えていなくても何となく判ると思います。
であるとするならば、渡していないのか?もしくは報酬と云う形ではなく、別の方法で分割して渡していたものを「報酬」と云う事にされたのか?と考えました。

仮に、詐欺罪として認められさえすれば、どの様な数字であっても中峯から彼女に渡ったお金、それは「報酬」として認められやすくなるでしょう。
逆に云えば、60万円の受領が通帳などで確認されて確実にあったとしても、詐欺として認められなければ詐欺罪としては成り立ちませんから、60万円の受領は別の罪状で訴えないと不問にされるはずだと考えています。

再逮捕報道の項でも書きましたが、黙秘するなら言質を取られない様に雑談も控えないと、その雑談から証言と云うカタチで証拠になってしまう恐れがあるのだと思います。

中峯の場合は、黙秘したとの報道はありませんので、普通に雑談にも応じていたと考えられますから、子供の頃の話から始まって、大学時代やサラリーマン時代の話題も多く出た事だと思われます。

当然、彼女との出会いのきっかけや、どの様な付き合いであったかなど、友達との会話の様に聞いていったものでは無いかと想像します。
その中には当然「誕生日プレゼントとかって彼女に渡したりするの?」とか「デートはどんなところに行くの?」とか聞くでしょうね。
中峯としても雑談ですし、担当刑事ともある程度は心を開いているでしょうから、誤魔化したり嘘を云う様な事は却って不自然になるので、普通に会話に応じていたと思います。
すると話は進んで「今時の誕生日プレゼントって幾らぐらいものをあげたりするの?」とか「デートって君が出してあげるんだ。最近は割り勘が多いって聞いていたけど、君は優しいね。」とか云った金銭がらみの会話に進展するでしょう。

それらの数字をコツコツ積み上げていったら……無事「報酬」の完成です。

ただ、この数字は些かやり過ぎの感が拭えません。
別々の公判で、しかも関係性が無いから問題ないと云われればそれまでなんですが、同じ時に逮捕された塚本とはどうしても比較対象にされてしまいます。
塚本は偽造までして17万円。一方こちらは申請の補助で60万円。
単価もたぶん彼女のほうが高いと思われます。
そんなに貰ったの?と思う人もいる反面、何か嘘臭いなと感じる人もいるでしょう。
そう考えると警察は「仕事が荒い」と思うのです。
シナリオを作ったのなら、その様に組み立てないといけませんし、シナリオが崩れたのならば、止めるか、組み立て直さないと何処かで不自然な面が出てくると思うのです。
一般的な仕事と考えると、その様な投げやりな仕事の仕方をしていれば、顧客の信頼を失う様な結果に見えてしまいます。

LINEの解析はその補強の為だと考えられないでしょうか?
LINEでは確実にその様な犯罪性の無い様な事、つまり日常の会話がいっぱい詰まっていると思うのです。
その中には、デートの約束とかも含まれているでしょう。

彼女にとって無意味に思えたLINEの解析ですが、一方検察にとっては「ここでデートの約束を取り付けました。そのデート費用は(中峯の証言により)幾らぐらいです。」と云う積み重ねをしてゆくために証拠書類として提出されたのではないかと考えました。
中峯の供述が証拠として採用されていない事から想像出来るように、この中峯との個人的なLINEには詐欺をしている様な事は書かれていないと考えるのが自然ですし、もし書かれているとすれば「(申請をお願いしている関係上)モノの見方によっては、そのこと(持続化給付金)の事を指しているのかも?」ぐらいの事だと思います。

それが逆に検察としては証拠として取り上げやすかったのではないでしょうか?
つまり、整合性の無くなるような詐欺に関係した会話があれば、(中峯の供述の様に)証拠として出しにくいが、金銭授受だけの為に出す証拠としては何も無いほうが却って好都合と云う事だと思います。

しかし彼女からすれば、このようなLINEの解析が「詐欺罪を立件する」証拠として何の意味があるのか?証拠書類として出されたとしても良く解らないと思いますから、これを見て直ぐに自白へ転換しようなどとは思えなかっただろうと考えます。

良く解らないけれど、証拠として提出されたのだし、もう初公判が迫っているから、他の書類では自白に使えない。
「このLINEで詐欺を知った事にしよう。」と考えても不思議では無いでしょう。
判っている事を曲げて答えるのは人間として勇気が必要ですが、(どうせ自白するのだから)解らない事であれば提出した相手に丸投げ出来ますし、LINEの内容とは一体どのようなものだったのか?でも書いた通り、持続化給付金申請の事を別の表現で書いた事が、何度も何度も読み返してようやく「それかも!」と勝手に判断する事も可能です。

取り調べる担当検察官と公判に出廷する検察官は別だと聞いていますから、自白は無いと判断していた検察官は当日になって急なシナリオ変更を迫られたものの、担当検察官では無いため臨機応変に対応する事が出来なかったのではないでしょうか。
10月3日に突っ込む予定だったものが、若干違うカタチで自白されたものですから、腫物に触るような感じになり、核心を突くことなく彼女へ寄り添う様な被告人質問に見えた。そんな感じがします。

第三者的な他の人の供述や陳述、60万円についても5W1Hのない苦し紛れの中峯の証言など、いずれも弱い証拠ですから、かなり慎重に組み立てて行かないと、整合性が取れない事になる可能性があったと考えています。
それを3時間と云う長丁場で細かく立証しようと考えていたところに、いきなりの自白と云う事になってしまい、用意していた質問も使えずにシナリオが一気に瓦解したと云うのは考えすぎでしょうか?

証拠書類は公判で見せなくて良くなったものの、内容を事細かに積み重ねようとしていた事が出来なくなってしまった。
5W1Hも無く、様々な情況証拠で固めようとしていたものだから、5W1Hを彼女に出されると整合性が取れなくなってしまう
※彼女も理解できる部分は検察の意向に沿って自白していたのでしょうが、「正当な経営者」の様に理解が及ばない部分は、どうしても意向に沿う事が出来ず、自分なりに考えた、もしくは自分の知り得たシナリオを作るしかありません。

一番良い例は60万円の使い道でしょう。
※何故証拠書類との矛盾が起こる事を知りながら、弁護士はこの様な質問をしたのかも私には理解できず、その他幾つかの疑問と相まってその能力に疑問を抱く訳ですが……
彼女は「貯蓄」と云ってしまいました。
まあ老後2000万円の心配がこの様な詐欺に手を染める事になったと云っているのですから、60万円を使ってしまったと云う答えはまず期待できません。
パパっと思いつくのはどうしても貯蓄となるでしょう。
しかし、証拠書類の中に彼女の通帳は含まれていない様子です。
証拠主義と呼ばれる裁判では、証拠に無いものは「無かった」ものとして扱われると聞いています。
そうすると、貯蓄と云いながら確実に押収されているはずの通帳がない。
整合性が取れない為、自白そのものの信ぴょう性にも疑いが生じると云う奇妙な事が起きます。

この様な事が被告人質問で繰り返されると、どうなるでしょうか?
検察としては、並べてきたドミノが一気に崩れた感覚になったかも知れません。

否認していれば、今まで知り得た証拠書類を見渡してみても、通帳類が無ければ(デート費用の推察が事実であったとしても総合的な判断などから)60万円の受領は無かったと認められたかも知れませんし、詐欺罪についても「知り得る立場にあった」ぐらいのニュアンスがやっとだったと思います。
だから、検察は彼女が初めから認めていた申請作業そのものを「なりすまし」とまでして、有罪に持ち込もうとしていた訳ですから、良くすれば無罪も夢ではなく、有罪の場合もこれから出るであろう判決より低かった可能性があるだけに残念でなりません。
※同じ執行猶予だろうと云う意見もありますが、「嘘をついた事」と「お金を要求してまで貰った事」などは人々に悪印象しか与えませんので、将来確実にマイナスポイントになると思います。

そう考えると、この裁判は他と比べる事の出来ないほどのイレギュラーな裁判では無いだろうか?と感じています。
そうでなければ、こんな不思議な事ばかり起こる裁判が一般的だとしたら、少し怖い感じがしますので。
何よりも否認していてくれた方が、彼女にも検察にも幸せが訪れたのかも知れませんね。

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